メジナは釣りの人気魚種で食べてもおいしい魚
メジナは、東北地方以南の太平洋および日本海側から、南西諸島にまで生息している魚です。比較的水深の浅い岩礁帯を回遊し、磯釣りや波止釣りでの人気の魚種です。見た目は真っ黒で、あまりおいしそうには見えませんが、クセのない白身なので、いろいろな食べ方ができます。
メジナの種類は3種類
メジナはスズキ目、メジナ科に属している魚です。メジナ科の魚は、日本近海だとメジナ・クロメジナ・オキナメジナの3種類が生息しています。主に釣りの対象や市場に出回るのはメジナとクロメジナで、オキナメジナはほとんど見られません。
見分け方として、クロメジナはメジナに比べると鱗がこまかく、エラブタの縁が黒くなっています。
メジナの旬の時期は?
メジナの旬の時期は、冬場です。魚は変温動物なので、水温が下がると自らの体内に脂肪をため込み、身を守ります。冬場は水温の低下とともに脂が乗ってくるので、身に甘味が増し、臭みもなく絶品です。
もう一つの旬は、産卵前です。メジナの産卵は、2月中旬~5月頃におこなわれます。この2つの条件が重なる冬場が、最高の旬の時期といえるでしょう。
メジナの入手方法は?
メジナは、磯釣りや波止釣りで入手できます。特に冬場は、外洋に面した磯から脂の乗った大型を狙えるでしょう。夏場は、湾内の波止や地磯などから中小型の数釣りが楽しめます。釣り方は、撒き餌を撒きながら釣るフカセ釣りか、仕掛けに装着したカゴに、撒き餌を入れて釣るカゴ釣りが一般的です。
メジナは魚屋で買うこともできる
釣り以外では、スーパーの鮮魚売り場や魚屋で購入できます。一般的には、25センチ~35センチくらいの大きさのものが売られています。ただし、アジやサバのように常に流通している魚ではないので、いつでも入手できるとは限りません。
価格は時期や地域にもよりますが、30センチくらいの大きさのもので、1匹500円~1,000円前後です。
メジナの臭みを出さないための下処理方法は?
メジナは、夏場だと臭みがでるといわれます。生息している場所や、主に食べているエサが原因で、臭みがでる場合があります。自分で釣りあげた場合は、臭みを出さないための下処理をしましょう。
ナイフが、あれば簡単にできる下処理方法なので、ぜひマスターしてください。メジナだけでなく、タイやチヌ・スズキなど、タイ系の魚に共通の下処理方法です。
下処理方法①:活締め
最初に、活締めをしましょう。まず、ナイフでメジナの脳を突きます。うまく脳に刺さると、メジナが口を大きく開けて痙攣します。即死させたら、エラの膜を切り、背骨の下に通っている太い血管を切りましょう。
下処理方法②:血抜き
次に、血抜きをします。バケツなどに海水を入れてください。メジナのエラを手で開き、エラの下側の付け根をつまみます。バケツの中でメジナを小刻みに振り、血を多く抜きましょう。下処理方法は、以上です。
メジナの3枚おろしの方法
塩焼きなどの食べ方で、小型のメジナを食べる時以外は、おろす必要があります。3枚おろしは、中型~大型のメジナを料理する際に、ぜひマスターしてほしい方法です。一度にスパッと切るのではなく、少しずつ包丁を入れていくのがコツ。初めは難しいかもしれませんが、慣れると簡単にできます。
頭と内臓を切り落とす
- 鱗取りなどで全体の鱗を取り、包丁の先端と根元でヒレの付け根の鱗を取る
- 次に、肛門からエラの付け根まで内臓を破らないように切る
- 両面のエラブタの背側から、胸ビレ・腹ビレを結ぶ線に切り目を入れる
- 内臓を切らないように、背骨を断ち切る
- 切った頭を引っ張って、内臓とエラを一緒にはずす
- 肛門の部分の内臓が身にひっついているので、包丁で切る
- お腹の中の膜や、血合いを洗い流して完成
2枚おろしにする
- 肛門から尾ビレにかけて切り目を入れる。ヒレの付け根の鱗が残っている場合は取る
- 背骨にあたるところまで刃を入れ、メジナの下半分を開く
- 背ビレの根元に浅く切り目を入れ、そのまま尾ビレまで入れる
- 背骨にあたるところまで少しずつ刃をいれる
- 尾ビレの手前で、腹側と背側を包丁で貫通させる
- 背骨に沿うように頭に向かって切り進め、腹骨を断ち切ると2枚おろしの完成
3枚おろしの完成
- 背骨のついている半身から、背骨をはずす場合は、背ビレ側から切り目をいれる
- 尾ビレの付け根から、頭のほうに浅く切り目を入れる
- 背骨にあたるところまで少しずつ刃を入れる
- 腹側も同様に、背骨にあたるところまで刃を入れる
- 尾ビレの手前で、腹側と背側を包丁で貫通させる
- 「2枚おろしにする」の6.の要領で腹骨を断ち切ると、3枚おろしの完成
メジナのおすすめ料理は?
メジナはクセのない白身で、いろいろな食べ方ができます。新鮮な食感とほんのりとした甘味のあるお刺身から、火を通した焼き物・煮物・揚げ物までバリエーションも豊富です。
生魚のおすすめ料理:お刺身
メジナのお刺身は、釣った当日だと、こりこりとした食感が特徴で、薄造りなどの食べ方が人気です。下処理を済ませたメジナを冷蔵庫で2日~3日熟成させると、うま味が増し、食感が少しもっちりとします。こちらは、少し厚めに切って食べましょう。また違ったあじわいが楽しめます。
メジナのお刺身の材料
- メジナの半身
- 大葉(1~2枚)
- 紅たで(少々)
- レモンスライス(1切れ)
- 大根のつま(少々)
メジナのお刺身のレシピ
- 腹骨をすき取りする
- 皮目を下にして尻尾側から包丁を入れ、皮を引く
- 皮を引いたら、背側の身・中骨・腹側の身に切り分ける
- 身をそぎ切りにする
- お皿に大根のつまを敷き、大葉を置いて、その上にメジナの身をかさねる
- 紅たでとレモンスライスを添えて完成
生魚のおすすめ料理:カルパッチョ
お刺身ばかりだと、味が単調になって飽きてしまう時は、カルパッチョという食べ方がおすすめです。お刺身を切って、ちょっと量が多すぎた時に、切り身をそのまま流用できるので簡単でしょう。大人用はお刺身・子供用はカルパッチョに作り分けると、食卓も賑やかになります。若い方には、馴染みがある人気料理です。
メジナのカルパッチョの材料
- メジナの切り身(適量)
- オニオンスライス(1/2個)
- 刻み葱(少々)
- レモン汁(1/4個)
- オリーブオイル(適量)
- 粗挽き黒胡椒(お好み)
- 岩塩(少々)
メジナのカルパッチョのレシピ
- オニオンスライスをお皿に敷く
- そぎ切りにした切り身を、円を描くように盛り付ける
- 岩塩をふりかけ、レモン汁をまわしかける
- オリーブオイルを回しかけ、黒胡椒と刻み葱をふりかければ完成
焼き物のおすすめ料理:塩焼き
魚料理の中で最もシンプルで、人気の定番料理は塩焼きでしょう。小型のメジナなら1匹まるごと、中型~大型のものは2枚おろしにして焼くと、一般家庭にあるグリルでも簡単にできます。たっぷりなじませて塩味を効かすもよし、薄塩でお醤油をかけて食べるもよしの簡単料理です。
メジナの塩焼きの材料
- メジナ(小型のものは1匹丸ごと、大きいものは切り身)
- あら塩(適量)
メジナの塩焼きのレシピ
- 20センチ前後の小型のものは鱗を取り、内臓とエラを取りだす
- お腹の中の薄い膜と血合いを、たわしなどでこすり取る
- 両面に飾り包丁を入れる
- 魚全体にまんべんなく塩をふり、お腹の中とヒレには多めに塩をつける
- 魚グリルか、網で両面を焼いて完成
焼き物のおすすめ料理:ムニエル
ムニエルは薄い衣をつけた焼き物で、すべての白身魚に合う人気料理です。しっかりと下味をつけてそのまま食べたり、下味は薄めでポン酢をかけて食べたりと、味のバリエーションも豊富。冷凍保存していたメジナの切り身を、ムニエルにするのがおすすめです。
メジナのムニエルの材料
- メジナの切り身(適量)
- 塩コショウ(少々)
- 薄力粉(適量)
- バター(少々)
- オリーブオイル(少々)
メジナのムニエルのレシピ
- 切り身に塩コショウをふりかけ、少し置く
- 薄力粉をまぶす
- バターとオリーブオイル、半々の量をフライパンに溶かして、弱火で皮つきの身は皮目からじっくりと焼く
- 皮目がカリッと焼けたら、ひっくり返して身側を焼いて完成
揚げ物のおすすめ料理:フライ
フライもムニエル同様に、白身魚に適した人気の料理法です。大きめの切り身を、タルタルソースで食べると絶品でしょう。ひとくちサイズの切り身を、野菜・エビ・イカなどと一緒に揚げると、豪華なフライの盛り合わせになります。
メジナのフライの材料
- メジナの切り身(適量)
- 塩コショウ(少々)
- 薄力粉(適量)
- 卵(1~2個)
- パン粉(適量)
メジナのフライのレシピ
- メジナの切り身に、塩コショウで下味をつける
- 30分ほど置いたら、薄力粉をまぶす
- 溶き卵にくぐらせて、パン粉をつけたら180度の油で揚げる
- 両面がキツネ色に揚がれば完成
煮物のおすすめ料理:煮つけ
魚料理で、ご飯にあう人気のおかずといえば、煮つけです。煮つけは、各家庭の味があるので、ここでは一般的な味付けをご紹介します。ポイントは、煮汁に魚の臭みが出ないようにすること。お腹の中の黒い膜と、背骨の下にある血合いを、きれいに水洗いしましょう。
メジナの煮つけの材料
- メジナ(30センチ前後1匹)
- 水(200cc)
- 酒(大さじ3)
- 砂糖(大さじ3)
- 醤油(大さじ4)
- みりん(大さじ3)
- しょうがスライス(少々)
メジナの煮つけのレシピ
- メジナの両面に飾り包丁を入れる
- フライパンに煮汁の材料を入れ、沸騰させる
- メジナを入れ、落し蓋をのせ中火にする
- 約10分煮たら、メジナを取りだし煮汁だけを煮詰め、とろみがでたらメジナにかけて完成
鍋のおすすめ料理:グレしゃぶ
鍋料理の定番の食べ方のひとつに、しゃぶしゃぶがあります。メジナのことを関西方面では「グレ」と呼びますが、しゃぶしゃぶだと、全国的に「グレしゃぶ」と呼ばれることが多いでしょう。冬場に人気の鍋料理は、冬が旬のメジナにはもってこいの食べ方です。
グレしゃぶの材料
- メジナの切り身(薄切り)
- 昆布(2切れ)
- 大根(1/4本)
- 白菜(1/4個)
- 豆腐(半丁)
- ポン酢
グレしゃぶのレシピ
- 鍋に水と昆布を入れ、30分ほど置く
- 中火で軽く沸騰してきたら、昆布を取り出す
- 野菜と豆腐を入れ、中火~弱火で野菜が柔らかくなるまで温める
- 野菜に火が通ったら、鍋に切り身を入れて、しゃぶしゃぶする
- お好みでポン酢・七味・ゆず醤油などで、味を調えて完成
メジナのことをグレと呼ぶ?
日本の中部以西から中四国までは、メジナのことを「グレ」と呼びます。釣り具店でメジナ釣り用の針を探すと、全国的に「グレ針」という名称で売られており「メジナ針」というのは見かけません。これは、紀伊半島や四国の磯釣りが盛んで、グレを専門に狙う釣り方がいち早く確立されたからでしょう。
メジナはグレ(もしくは口太グレ)、クロメジナは尾長グレと呼ばれています。
地方によって呼び名が変わるメジナという魚
グレ以外にも、地方独特の呼び名があります。有名なのが、九州地方での「クロ」という呼び方でしょう。クロメジナのことは「尾長グロ」です。他にも、北陸地方の「チカイ」や、伊豆方面の「クシロ」という呼び方もあります。
白身で料理法が豊富なメジナをおいしく食べよう
メジナは焼き魚、煮魚、お刺身などあらゆる食べ方が楽しめる魚です。釣りの対象魚としても釣れる地域が広く、小型のものなら比較的簡単に釣ることができます。メジナは、適切な下処理をすると臭みが出ません。新鮮なメジナを好みの料理方法であじわえるのは、釣り人の特権でしょう。
釣って楽しい、食べておいしいメジナ料理にぜひ挑戦してください。
出典:ライター撮影