ボラってどんな魚?
ボラはクロダイと同じタナで同じようなエサを食べるため、クロダイ釣りでは外道として扱われます。好んで釣る人は少ない魚ですが、ボラについて皆さんはどんなイメージを持っていますか。ボラについて生態から釣り方・食べ方まで解説します。外道として認識していたボラのイメージがガラリと変わるでしょう。
ボラの特徴
ボラ目ボラ科に属する魚で、生息域は北海道より南の日本各地の沿岸です。河口や下流にも生息し、淡水でも生きられます。最大で80センチくらいの大きさまで成長し、細長い体に丸い頭・大きな銀色の鱗が特徴です。
ボラの食性
ボラは雑食のデトリタス食性と呼ばれる食性です。デトリタスとは水底に堆積した微生物の死骸などのことで、水底の付着藻類や甲殻類をエサにしています。水底のデトリタスや藻を食べる際は、砂泥ごと吸い込む点が特徴です。
ボラは臭いから嫌われ者?
釣り人の間でボラは嫌われる傾向があります。エサを盗られる・ハリスを切られる・暴れてポイントが荒れてしまうなど、理由はさまざまですが、一番の理由はその身の臭さです。ボラは汚い水でも生きられるたくましい魚なので、その身に臭いがうつります。水が汚いところに住むボラの身は、とても臭く食べられません。
仲間の魚はどんな種類がいる?
ボラ科に属する魚は世界中で72種類おり、日本には少なくとも15種類が生息しています。全国的に生息するのは、ボラ・メナダ・セスジボラの3種類です。この中でもメナダは、なかなか獲れない高級魚であり、夏が旬のとてもおいしいことで知られています。
ボラには別名がある?
ボラにも別名があります。地方名がたくさんありますが、大きさによって名前が変わる出世魚としても有名です。いくつか見ていきましょう。
大きさで名前が変わる出世魚
名前の変化 | |
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関東 | オボコ→イナッコ→スバシリ→イナ→ボラ→トド |
関西 | ハク→オボコ→スバシリ→イナ→ボラ→トド |
高知 | イキナゴ→コボラ→イナ→ボラ→オオボラ |
東北 | コツブラ→ツボ→ミョウゲチ→ボラ |
ボラは、関東でオボコからイナッコへ変わり、イナ・ボラ・トドの順で名前が変わります。「とどのつまり」という言葉は、ボラの別名のトドが由来です。これ以上大きくならない点からできました。
地方名
ボラの地方名で有名なのは、伊勢・三重県でのイセゴイという呼び方です。かつて三重県は、ボラを食べる文化が栄えていたため、地方名が存在します。通常イセゴイという魚は、英語でターポンと呼ばれる魚のことなので間違えないようにしてください。シロメ・クロメ・ブラ・メジロなどの地方名も存在します。
ボラの釣り方の種類は?
外道のイメージが強いボラですが、本命として狙う釣り方も存在します。変わった釣り方もありますので、釣り方をいくつか見てみましょう。
ウキ釣り
ボラは、クロダイのウキ釣りの外道としてよく釣れます。そのため、一番身近な釣る方法はウキ釣りです。主に水底を泳いでエサを探していますので、底にタナを合わせるようにウキ下をとりましょう。
竿
竿は1〜1.5号の磯竿がおすすめです。繊細なアタリなので、あまり太くすると上手くアワセられません。長さは4.2メートルから5.3メートルくらいのものがよいですが、釣り場に適した長さ・自分が使いやすい長さのものを選ぶと釣果につながります。
リール
リールは2000〜3000番くらいのスピニングリールを使います。クロダイ釣りやメジナ釣りと同じようなリールで大丈夫ですが、磯釣りやクロダイ釣りで使うラインより太いものを使うので注意してください。
ライン
ラインの道糸はナイロン2〜3号くらい・ハリスはナイロンまたはフロロカーボンの1.5号から2号くらいを使いましょう。少し太いと感じますが、魚体が大きく重い魚なので、これくらい太くないと切れてしまいます。
ウキ
クロダイ釣りで使われる棒ウキがおすすめです。理由は2つ。1つはタナが深いので、仕掛けに重めのオモリをつける必要があり、そのオモリに耐えられるから。もう1つは、ボラのアタリは繊細で、棒ウキだと小さなアタリをとらえやすいからです。
針
チヌ針の1〜3号くらいを使ってください。ボラは口が小さく、アタリも繊細であるため、同じくアタリが繊細なクロダイを釣るための針がよく合います。市販のハリスが結ばれているもので大丈夫です。自分で針を結ぶ方は、やりとり中に抜けないように結びましょう。
エサ
エサはオキアミをおすすめします。ボラは冬になると脂瞼と呼ばれる脂の膜が目を覆うようになります。そのため、あまり目が良くありません。臭いが強く、赤色で目立つオキアミが効果的です。オキアミを使ったコマセも用意しましょう。
その他の釣り方
カットウ釣り
カットウ釣りとは引っ掛け釣りのことです。コロガシ竿のような硬いのべ竿に、8号くらいの太いナイロンラインを結び、先端にカットウ針をつけます。カットウ針にヒラヒラした飾りがついていますので、竿を上下させてください。飾りに惹かれて寄ってきたボラを、針で引っかけて釣ります。
ルアー釣り
バチ抜けと呼ばれるゴカイ類の産卵時期には、ルアーにも反応します。竿はシーバスロッドで、3000〜4000番くらいのリールに1号前後のPEラインを使ってください。口が小さいため、5センチ以下のシンキングペンシルやミノー・ワームを、ゴカイ類が泳ぐように巻いて食わせるのがコツです。
フライ釣り
フライの好ターゲットにもなります。フライロッド・リール・フライラインは、8番前後のものがよいでしょう。リーダーとティペットは2Xくらいで、そこに10〜14番くらいの大きめのフライを付けてください。藻類やアミエビを模したものを状況に応じて使います。
ボラの食べ方は?
ボラは臭いと紹介しましたが、水が綺麗なところで釣れたボラは臭みがなくおいしい魚です。しかし、スーパーで売られず、料理屋のメニューに載ってることは、ほとんどありません。新鮮なボラを釣って食べられるのは、釣り人の特権です。ボラを使った料理を覚えておいしくいただきましょう。
ボラはどんな味?
水が汚いところや湾奥のボラは身が臭いのです。しかし、江戸時代までさかのぼるとボラは高級魚でした。戦後の開発による水質汚染が原因で臭い魚というイメージがついたと言われています。水が綺麗なところのボラは、旨み溢れる白味が特徴です。特に、冬のボラは寒ボラと呼ばれ、脂がのった魚のおいしさを味わえます。
ボラ料理の種類
洗い
洗いは、刺身よりも薄く切った生の魚の身を使用し、流水で洗って氷水で締める料理です。洗うことで魚の臭みを落とし、氷水で締めることでクセがなく食感が出るようになります。洗いが一番おいしいボラ料理と言っても過言ではありません。
刺身
刺身もボラのおいしさをより感じられる料理のひとつでしょう。夏のボラは淡白な味が特徴で、冬のボラは脂がのっているのが特徴です。季節ごとに違う味を楽しめます。
塩焼き
塩焼きもおいしい食べ方です。三枚におろしたボラを食べやすい大きさに切り、塩を適量振りかけ30分ほど寝かせてから焼きます。小さいボラなら内臓を抜いて、そのまま焼いても大丈夫です。お腹に脂があるため、腹骨を切りすぎないように注意しましょう。
カラスミの料理
ボラがおいしいのは身だけではありません。ヘソと呼ばれる幽門部や、白子も珍味として食べられています。特に有名なのが卵巣を塩漬けにしたカラスミです。カラスミ用にボラ漁をする漁師もいるほど高級食材なので、カラスミを使った料理も覚えましょう。
焼きカラスミ
名前のとおり、カラスミをそのまま焼いた料理です。少し焦げ目がつくくらいまでコンロやオーブンで焼いて、カットした大根と一緒に食べます。生臭さを消すために焼く前に少しお酒を塗りましょう。お酒のお供にぴったりの料理です。
カラスミのパスタ
パスタもおいしい食べ方です。オリーブオイルでにんにく・唐辛子を炒めて、そこに茹でたパスタと少量のパスタの茹で汁を入れて炒めます。最後にすり下ろしたカラスミを入れて、混ぜて全体に馴染ませたらできあがりです。
ボラは魚市場でどんな扱い?
ボラは定置網や刺網で漁獲され、関東地方では冬に定置網にまとまって入ります。定置網のボラは臭みが少なくおいしいのですが、残念ながら市場では安い値段がついてしまうのです。しかし、産卵時期の秋から冬のメスのボラはカラスミ用の卵巣がとれるため、高値で取引されます。
ボラの見方が変わりましたか?
ボラは臭い魚というマイナスイメージがありました。この記事を読んで、見方は変わりましたか。これまで外道として扱っていたボラを、本命として狙いにいくのはいかがでしょうか。自分で釣ったボラを洗いや塩焼きにしたり、カラスミを料理しておいしくいただきましょう。
出典:ライター撮影