カサゴはどう料理してもうまい魚
カサゴは、日本の沿岸部に一年中いる魚で、岩礁やテトラポッドの間をすみかにしています。関東では「カサゴ」、関西では「ガシラ」、九州では「アラカブ」と呼ばれており、鮮魚店の店頭でもよく見かけます。味の良さと手軽に取り組めることから、釣りの対象魚としても人気です。最近では『ガシリング』なる言葉が言われはじめるほど、カサゴ釣りは盛り上がってきているのです。
カサゴの旬は、秋から冬といわれていますが、四季を通じていつ食べてもおいしい白身の魚です。その食べ方も、刺身・天ぷら・煮付け・唐揚げ・干物・味噌汁などと多彩であり、どう料理してもうまいという、とてもありがたい魚なのです。ここでは、それぞれの料理に合ったさばき方と、料理方法について解説します。
カサゴのさばき方は料理によって違う
当然ですが、作る料理によって、それに適したさばき方があります。このさばき方を間違えると、思ったような料理になりませんので、要注意です。とはいっても、それぞれのさばき方には共通の処理もあり、慣れれば難しいものではありませんので、気軽にチャレンジしてください。まずは、下処理からです。
下処理①:うろこ取り
下処理でまず行うのは、うろこ取りです。でもその前に、カサゴの背ビレと腹ビレ、頭には鋭いトゲがあって危ないので、ハサミで切り落とします。そして、包丁の背でうろこをていねいに取り除きましょう。特に、背ビレや胸ビレの根もとや腹の部分、尾ビレの前などは、うろこが残りやすいので、特に気をつけて取ってください。ここまでの処理が終わりましたら、水でうろこを流しておきます。
下処理②:臭み取り
もともと、カサゴは臭みの少ない魚です。ですので、臭み取りの処理も、全身に軽くお湯をかける程度で十分です。また、刺身にする場合は、皮に熱湯をかける『湯霜造り』を施すと、臭みも抜け、見た目もきれいになり、味もさらによくなると、いいことづくめです。『湯霜造り』については、後ほど詳しく解説します。
カサゴのさばき方①:刺身、天ぷらの場合
刺身、天ぷらには三枚おろし
刺身と天ぷらにする時のさばき方は同じで、三枚おろしにします。三枚おろしのコツは、中骨に身をできるだけ残さないことです。最初は中骨に盛大に身が残ってしまうこともあるでしょうが、慣れてくれば簡単にできるようになりますので、経験を積み重ねてください。
手順①:頭と内臓を外す
下処理を施したカサゴの胸ビレを起こし、斜め上に向けて包丁を入れます。反対側も同様に包丁を入れ、頭を外します。この時、頭に付いてくる内臓も、できるだけ一緒に外してください。その後、肛門から包丁を入れて腹を開け、残っている内臓を取り除き、さらに中骨に付いている血合も、歯ブラシなどできれいに取り除きます。
手順②:中骨から身を外す
頭を外したら、肩から包丁を中骨に当たるまで入れ、背ビレに沿って尾まで切っていきます。次に、開いた腹から尻ビレに沿って包丁を入れ、尾まで切っていきます。最後に、腹骨を中骨から切り外せば片身が離れます。逆側も同じ手順でおこなえば、三枚おろしができあがります。このあとは、刺身と天ぷらのどちらにするにしても、腹骨をすきとり、血合骨は骨抜きで抜いておきましょう。
包丁は少しずつ入れていこう
- 包丁は一気に中骨まで入れるのではなく、刃の先を少しずつ入れていく切り方をすると、骨に身があまり残りません。
- このとき、身を上にめくりながら、包丁の刃を骨に当てて滑らせるように開いていくと、きれいに下ろせます。
刺身は『湯霜造り』で
カサゴを刺身でいただく場合、普通に皮を剥いだ切り方より、『湯霜造り』にすると仕上りが美しく、一段ランクアップします、まな板などに三枚におろしたカサゴを乗せ、クッキングペーパーをかぶせます。ボウルに氷水を用意し、まな板をセットして、沸騰した熱湯をカサゴの皮にかけます。お湯の熱で皮が縮んだら、即座に氷水に入れて粗熱を取り、盛りつけます。
熱湯をかけるときの注意
- 熱湯は、皮を狙ってかけてください。身には、熱を入れないように注意しましょう。
- ペーパータオルを使うのは、身にお湯が回らないようにするためです。
湯霜造りは熱湯をかけることで、皮に熱が入り柔らかくなるのと、皮の下の脂肪にも熱が入るので、旨みが増すのです。さらに、カサゴの赤い皮の色がさらに赤く見栄えもよくなります。ちなみに、右側、皮目が黒くなっているのは、皮目をバーナーであぶる『焼き霜造り』を施した刺身ですが、カサゴは、皮の色目がよくなる『湯霜造り』での処理をおすすめします。
カサゴのさばき方②:煮付けの場合
煮付けた姿が美しくなるようにさばく
煮付けの場合は、魚の姿がそのまま料理になります。ですので、できるだけその仕上りがきれいになるようにさばきます。また、魚に早く火が通るよう、ひと手間を加えておくことも大事なのです。
手順①:エラと内臓を取る
煮付けにする場合は、エラを必ず取りましょう。下処理をしたカサゴのエラブタを開くと、エラの後ろに胴体とエラを繋いでいる透明の膜があります。左右のこれを包丁で切り、あごの上下とエラを繋いでいる関節も切り離しますと、エラはするっと取れてきます。この時、エラに繋がっている内臓も、一緒に取ってしまいましょう。残った内臓は腹を開けて取り、血合もしっかりと洗います。
なぜ煮付けではエラを取るか
- その色を見てもわかる通り、エラには血がたくさん含まれています。
- エラを付けたまま煮込んでしまいますと、血の臭みが煮汁に移り、煮付けの味が悪くなってしまうのです。
- 簡単な作業ですので、エラは必ず取りましょう。
手順②:飾り包丁を入れる
内臓と血合いをきれいにしたら、カサゴの身に飾り包丁を入れておきます。形は、上の画像のように斜めに二本入れてもよく、またバツを描く切り方もあります。裏面は、横一文字に切り込みを入れてください。
飾り包丁はなぜ入れるのか
- 飾り包丁は、魚に早く熱を入れるために行います。長い時間、魚を煮付けると、旨みが煮汁に出てしまうからです。
- 身に入れた切れ目により、早く熱が入り、味も早くしみていきます。
- また、切れ目を入れることで、加熱した時に皮や身が引きつれず、魚の型が崩れません。
煮付ける時間は5~10分
20センチ以下のカサゴでしたら、一尾丸のまま煮付けにするのが良いでしょう。醤油、日本酒、みりん、砂糖で煮汁を少し甘めに作り、一度煮立てます。煮汁が煮立ったら、カサゴとスライスしたショウガを3~4枚入れ、アルミホイル等で落し蓋をして、弱めの中火で5分ほど煮付けます。煮汁が少なくなってきたら、落し蓋を取り、煮汁をカサゴにかけながら2~3分煮詰めて完成です。
煮付けは煮汁に魚の身をつけて味わう
- 煮付けは、魚の身に味を染みつける料理ではありません。
- 旨みを残して火を通した魚の身を、煮汁につけていただくものです。
- ですので、飾り包丁を入れて、さっと煮付けます。
カサゴのさばき方③:唐揚げの場合
煮付けのさばき方にひと手間加えて唐揚げ用に
唐揚げ用のさばき方は、煮付けの場合とほとんど同じで、最後にひと手間、処理を加えるだけです。なにより、カサゴの唐揚げは絶品のうまさですので、ぜひチャレンジしてみてください。
手順①:下処理してエラと内臓を取る
うろこ取り、臭み抜きの下処理をした上で、エラと内臓を取り除き、血合もきれいに取ります。ここまで、煮付けのさばき方と同じです。エラは、唐揚げの場合は味には影響はしませんが、その構造上水分を多く含んでいますので、取っておいた方が無難です。また、うろこは揚げた時に熱が通ってチリチリになりますので、さほど神経質に取らなくても大丈夫です。
手順②:背に大きく切り込みを入れる
カサゴを腹を下にして立てて、背ビレから中骨に向かって、左右に切り込みを入れます。これは、熱の通りを早くするのと、骨にも熱を入れるためです。これで、唐揚げ用のさばきは完成です。簡単でしょう?
唐揚げは二度揚げで
カサゴの唐揚げでは、ヒレもパリパリと食べることができ、香ばしさもたっぷりの二度揚げがおすすめです。言葉で聞くと難しそうですが、手順を踏んで行えば、これも簡単な作業です。絶品のカサゴの唐揚げを味わうために、がんばって二度揚げにトライしてください。
手順①:一度目の揚げ
唐揚げの調理は、とても簡単です。カサゴの全身に、片栗粉を十分にまぶしてから、150℃くらいの低温で、3~5分ほど揚げます。ある程度身に熱が入りましたら、一度油から上げて、3分ほどバットなどで休ませます。こうして、余熱で身に熱を完全に入れます。
手順②:二度目の揚げ
二度目の揚げは、油の温度を170℃くらいの中温に上げて、3~5分ほど揚げます。この揚げの目的は、表面をパリパリの食感に仕上げるためですので、少し焦げ目がつくくらいまで、揚げてください。
油の温度は、衣を油に落として判断する
- 低温(150~160℃):衣は、一度底まで沈み、ゆっくりと上がってくる
- 中温(170~180℃):衣は、途中まで沈み、ゆっくりと上がってくる
- 高温(180~190℃):衣は、途中まで沈み、すぐに上がってくる
カサゴのさばき方④:干物の場合
カサゴは、干物にしても美味しい魚です。干すことで身に甘みが加わり、上品なおいしさのひと品に仕上がりますので、たくさん釣れた時は保存も兼ねて、作ってみましょう。
干物用のさばき方は腹開き
干物用のさばき方も、今まで説明したさばき方がベースであり、それに新たな切り方を加えただけですので、簡単に行うことができます。
手順①:下処理してエラと内臓を取る
うろこ取り、臭み抜きの下処理をした上で、エラと内臓を取り除き、血合もきれいに取ります。ここまでは、煮付けのさばき方と同じです。エラは、干物の味には影響はありませんが、見栄えが悪いので、取り去っておきましょう。うろこは、皮目から焼いてしまいますので、さほど神経質に取らなくても大丈夫です。
手順②:腹から真っ二つに開く
干物にする場合は、カサゴは頭が大きいですので、腹開きで真っ二つにするのがよいでしょう。片袖開きという、頭は割らずに背から開く切り方ですと、頭のボリュームが目立ってしまい、美しくないです。もしくは、頭を落として腹開きにしてもかまいません。どちらか、ご自分のやりやすい切り方でさばいてください。
冷蔵庫で一晩休ませるのがコツ
腹開きにしたカサゴを8%前後の塩水に、2~30分漬けます。身が締まり、目が白く濁ってきましたら、塩が十分に入りましたので、塩水から上げます。この後、水で塩水を洗い流してから、水気をしっかり取り、ラップを軽くかけて冷蔵庫で一晩(6~8時間)寝かせます。翌日、風通しの良い日陰で8時間くらい干せばでき上がりです。
なぜ冷蔵庫で一晩寝かせるのか
- 冷蔵庫で一晩寝かせるのは、熟成のためです。この熟成工程により、旨み成分が身の全体に回り、おいしい干物になっていきます。
カサゴのさばき方⑤:味噌汁の場合
ぶつ切りにしてカサゴの旨みを存分に味わおう
味噌汁こそ、カサゴ料理の王様と言う人は多く、カサゴが持つ旨みをすべて味わい尽くせるこの料理は、とても人気があります。その人気の秘密は、ほとんど手間いらずの簡単さと、体の芯から暖まる旨さにあるのではないでしょうか。以下に、さばき方と味噌汁の作り方を解説します。
手順①:下処理してエラと内臓を取る
うろこ取り、臭み抜きの下処理をした上で、エラと内臓を取り除き、血合もきれいに取ります。エラは臭みのもとですので、残っていると味に影響が出ますから、しっかり取り去りましょう。また、うろこも残っていると、味噌汁の中に落ちて食感を悪くしますので、こちらもきちんと落とし、水洗いも丹念に行ってください。
手順②:ぶつ切りにする
きれいに下処理したカサゴは、小さいサイズでしたら一尾丸のままでもいいですが、20センチくらいのものでしたら、ぶつ切りにします。この場合の切り方は、頭を切り落とし、身の部分はサイズ次第で、2等分または3等分に切ってしまいます。頭も味噌汁に使いますので、取っておきます。
丹念なアク取りがおいしい味噌汁作りのコツ
魚をぶつ切りにして味噌を溶くだけ、といってもいいくらい簡単な味噌汁ですが、そこはやはりひと手間をかけると、出来栄えが全然変わります。そのひと手間とは、アクを徹底的に取ることですので、丹念に行ってください。
手順①:日本酒を入れた水で先茹でする
ぶつ切りにしたカサゴ、水適量、日本酒適量をそれぞれ 鍋に入れて、中火で加熱します。日本酒は、味噌汁にコクを加えるので、忘れずに入れてください。水が沸騰すると、カサゴからアクがどんどん浮いてきますので、これが出なくなるまでアクすくいで取り除いてください。アクは雑味になりますので、これを取り除くことで、クセのないおいしい旨みが出てきます。
手順②:火を一度止めて味噌を溶く
カサゴのアクを取り終えたら、一度火を止めて、味噌を溶き入れます。味噌の分量は、汁の色を見ながら、味見をして決めてください。味噌の味が決まりましたら、再度加熱し、沸騰直前で火を止めて、長ネギなどの薬味を加えて、出来上がりです。
なぜ味噌を溶くときに火を止めるのか
- お湯が沸騰した状態で溶き入れると、味噌の香りが飛んでしまうからです。
- 味噌を溶き入れるときは、必ず火を一度止めましょう。
料理にあったさばき方でカサゴをおいしく食べよう
カサゴって実においしそうな魚でしょう。突堤からでも釣れる魚ですし、さばくのもさほど難しくはありません。なにより、味がいいので人気が上がるのも当然です。お店では高級魚ですが、それを超新鮮な状態で手に入れることができるのは、釣り人の特権といえるでしょう。次の週末にはカサゴを狙って釣って、料理に合った切り方でさばいて、カサゴ料理を楽しんでください。
出典:flickr _ Photo by mk-pick