サーフトローリングってどんな釣り?
サーフトローリングは弓角という小型のルアーを使って、サーフや堤防などから遠投して主に青物などを狙う釣り方です。ルアー釣りの一種ですが、通常のルアー釣りとは少し違います。通常のルアー釣りはメタルジグなどのルアーをリーダーを介してラインと直結しますが、サーフトローリングはトレーラーといわれるオモリを介して小さくて軽い弓角を遠投して釣ります。ルアーのようなアクションも必要なくシンプルな釣り方で楽しめます。
サーフトローリングのポイントは?
サーフトローリングの主なポイントは文字通りサーフ(砂浜やゴロタ浜)です。サーフは岸から沖にかけて徐々に深くなっており、所々にカケアガリといわれる水深の変化する場所があります。そういったカケアガリはエサとなる小魚が集まりやすく、それらのエサを捕食するために青物が回遊してきます。投げ釣りタックルを利用したサーフトローリングはメタルジグ以上に遠投ができます。遠投すればするほど広範囲に探れて有利なサーフは絶好のポイントです。
サーフトローリングの時期
冬場は水温が低くサーフにはエサとなる小魚も少なく、それを狙う青物の回遊もほとんどありません。春から初夏を迎えるころになるとエサとなる小魚が浅瀬に集まり、それを狙う青物の回遊が始まります。地域にもよりますが、5月初旬くらいから釣りシーズンが始まります。シーズン前半は型も小さく数もまだ多くありませんが、6月くらいになると大型の青物も混じりはじめます。梅雨明けから9月中旬くらいまでが最盛期となり、各所でナブラが見られるようになります。9月末くらいからは徐々に回遊が減りはじめ、だいたい11月いっぱいくらいまでがシーズンです。
サーフトローリングの主役、弓角とは?
弓角はアクリルやプラスチックなどの樹脂に釣り針を埋め込んだルアーの一種です。大きさは4cm~6cmくらいまでで、プラスチックの本体が少し湾曲しています。ちょうど春先に産卵した魚の卵が孵化して、1か月~2か月ほど経過したシラスくらいの大きさです。それぐらいの大きさの小魚などをエサにしている中小型の青物を狙うのに適しています。メタルジグでは大きすぎて釣れない時に威力を発揮します。またルアーのように難しいロッドのアクションをつける必要もないので、弓角を使ったサーフトローリングは初心者にも適した釣り方です。
弓角は日本の伝統的漁具
弓角は古来からの伝統的な漁具として漁師たちに使われてきました。もともとは動物の角や骨を削って、釣り針を埋め込んだものです。それを昔の漁師は船を動かしながらトローリングのように曳き、弓角をエサに見立てて漁をしていました。現在ではアクリル樹脂などに原材料が変わり、投げ竿やスピニングタックルの進化により陸からもサーフトローリングという釣り方で楽しめるようになりました。これといったロッドアクションも必要なく、投げて巻くだけというシンプルな釣り方が受け弓角が再び脚光を浴びています。
弓角の特徴は?
ルアーとは違う弓角の外見の特徴のひとつは釣り針が弓角本体に直接埋め込まれているところです。ルアーのようにフックアイに針を付けるような構造にはなっていません。また弓角のリップ部分にはルアーのようにラインアイもなく本体に小さな穴が開いています。その穴にハリスを通して結びこぶを作って留めるというシンプルな構造になっています。外見の特徴以外では、投げて巻く時に湾曲したボディが水の抵抗を受けてクルクルと回るところです。この回転による波動が魚を誘うので、ルアーのように複雑なロッドアクションをしなくても釣れるのです。
弓角のルアーと比較した長所は?
弓角の長所は何といっても小さくて軽いのに、サーフトローリング仕掛けで遠投ができるところにあります。ターゲットの青物がエサにしている小魚が小さいと、メタルジグなどでは反応しないことが多々あります。かといってルアーをエサに合わせて小さくすると飛距離が落ちます。そんな時に弓角を使ったサーフトローリングなら小さい弓角を遠投することが可能です。もう一つは弓角が巻く時に水の抵抗で回転し、その動きと波動で魚を誘うところです。ルアーのようにジャークやトゥイッチといったロッドアクションなしでも釣ることができます。
弓角のルアーと比較した短所は?
では弓角は万能かというと長所ばかりではなく短所もあります。弓角は中小型には有効ですが、大型の青物とはあまり相性はよくありません。釣れる魚が5kgを超えるような時は針がかりしても破損する恐れが大きくなります。またエサとなる魚が10cm以上の大きさがメインの時は、小さい弓角では見向きもされないこともあります。それと構造的な問題ですが、針が本体に埋め込まれているのでルアーのようにフックの交換ができません。針が伸びたり針先が鈍ると弓角自体が使い物にならなくなります。
サーフトローリングで釣れる魚は?
海の中で体長が4cm~6cmの小魚をエサとして捕食している魚はたくさんいます。基本的に弓角があればそれらの魚を釣ることが可能です。ここではサーフトローリングで釣ることのできる魚の一部をご紹介します。
釣れる魚① ブリ
サーフトローリングで釣れる魚の代表的なものはブリの若魚のツバス、ハマチ(関東ではワカシ、イナダ)で30cm~50cmくらいのものがメインになります。シーズンは長く4月くらいから釣れはじめ、12月くらいまで狙えます。釣り方は基本的にはノーアクションの表層ただ巻きで大丈夫です。遠投カゴ釣りなどのエサ釣りの釣り人が多い釣り場では、エサに寄せられて沈んでいることも多いので、中層から下を通したほうが良い時もあります。
釣れる魚② ソウダガツオ
ソウダガツオもサーフトローリングで釣れる魚の代表です。ヒラソウダとマルソウダが主なターゲットです。どちらもノーアクションで表層付近の早巻きで釣れます。大きさは30cm~40cmが中心でスピード感のある引きが楽しめます。ヒラソウダは新鮮なお刺身やタタキは最高ですが、マルソウダは血合い肉が多く生食には不向きです。どちらも足が早い魚なので、釣ったらすぐに血抜きと内臓の処理をしてクーラーで冷やしておきましょう。
釣れる魚③ カンパチ
パワフルな引きと上品な食味が人気のカンパチですが、サーフトローリングで釣れるサイズは30cm~50cmのシオ(関東ではショゴ)と呼ばれるカンパチの若魚です。カンパチは比較的底付近に生息しており、根に付く魚でもあります。基本的にはメタルジグなどでの縦のアクションで釣れることが多い魚です。活性が高い時は表層付近までエサを追って食い上がってきます。その時の状況しだいで表層から底層を探るのが良いでしょう。
釣れる魚④ タチウオ・サゴシ
捕食している魚が小さい時はタチウオやサゴシなどの歯の鋭い魚が弓角にアタックしてくることもあります。青物に比べると引きはそれほど強くはありませんが、鋭い歯にやられてハリス切れが多くなります。そういった歯の鋭い魚が多い時はハリスを太くするかハリスのチモトを補強をしてハリス切れを防ぎましょう。また釣り上げることができても大抵はハリスにキズがついています。あらかじめハリスを長めにとってキズついた部分をカットして弓角とハリスをこまめに結びなおすようにしましょう。
釣れる魚⑤ ヒラメ・マゴチ・根魚
サーフトローリングで釣れる魚は青物や回遊魚ばかりとは限りません。サーフなどで中層付近に弓角を泳がせているとヒラメやマゴチといった普段は海底に生息している高級魚が釣れることもよくあります。青物ほど泳ぎが得意な魚ではないので、中層から下をややスローリトリーブで弓角を曳くのがコツです。また岩礁地帯では型の良いガシラ(カサゴ)やアコウ(キジハタ)といった根魚が弓角に食らいつくこともあり、釣れる魚種が豊富なところも弓角の魅力です。
サーフトローリングの仕掛けは?
サーフトローリングの仕掛けはトレーラーに何を使うかの違いだけで、大きくは投げ釣り用の天秤か遠投マウスの2種類に分けられます。トレーラーには仕掛けを遠くに飛ばすための役目と、弓角を通す海中の層を調節する(リールの巻くスピードでの調整と併用)役目があります。それ以外ではロッドを投げ竿にするか遠投用の磯竿にするか、あるいはショアジギング用のルアーロッドにするかの違いです。
オーソドックスなジェット天秤仕掛け
サーフトローリングで一番オーソドックス釣り方でもある投げ竿にジェット天秤を使った仕掛けです。キスの投げ釣りのタックルのハリス部分に弓角を付けただけのもので、最も遠投には適しています。早朝はサーフトローリングで青物を狙い、昼間はハリス部分をキス仕掛けに交換してキスの投げ釣りを楽しむこともできます。
マウスを使って水しぶきで誘う
上記のジェット天秤の仕掛けの天秤部分を遠投マウスに交換したものです。マウスの場合は形状的に空気抵抗が大きいので、ジェット天秤に比べると同じ号数でも飛距離は劣ります。表層を早巻きするとマウスが水しぶきを上げ魚にアピールします。仕掛けの届く範囲にナブラができた時などのナブラ打ちには効果絶大です。また遠投マウスにはシンキングタイプもあるので、中層~下層をややスローにリトリーブする時などにも有効です。
小物を利用して差をつけろ!
弓角は早く巻くことによって回転します。その回転による視覚的効果と波動によって魚を誘うのですが、どうしても糸ヨレが発生しやすくなります。それを少しでも解消するために天秤にハリスを直接結ぶのではなく、スナップスイベルでハリスと天秤をつなぐのがおすすめです。スナップスイベルは少々高くてもボールベアリング入りの回転の滑らかなものを選びましょう。
サーフトローリングの釣り方は?
サーフトローリングの釣り方は特別難しいというものではありません。メタルジグなどを使う時のような複雑なアクションも不要です。弓角を海中のどの層をどれくらいのスピードで通すかということが肝心です。魚が反応する層、スピード、弓角の色などを早く見つけることがコツです。
基本はただ巻きでOK!
サーフトローリングは仕掛けを投入し、トレーラーが着水したらすぐに巻き始めます。投入時はトレーラーが着水と同時にリールのスプールをサミングします。そうすることによってトレーラーと弓角が一直線で着水し、道糸に絡みません。あとはノーアクションでひたすらただ巻きでOKです。サーフトローリングの仕掛けは、アクションをかけてもトレーラーが支点となりうまく弓角に伝わりません。リールを巻くスピードは1秒間に3〜4回転を基本に、早めたりゆるめたりしてその日の魚の活性を確かめましょう。
表層・中層・下層と攻める
サーフトローリングだけでなく、ルアーフィッシングなどでも同様ですが、初めは表層から攻めます。反応がなければ仕掛けが着水後、カウントダウンをして中層に弓角を通してみます。最後にトレーラーを底まで落として、底層に弓角を通してみます。このローテーションでも反応がなければ、弓角の色を交換してみましょう。メタルジグに比べると小さく、アクションもつけられない弓角はとにかく広く探ることが肝心です。
アタリとアワセ
アタリは巻いている途中にググッと乗ってきたり、重みが加わったりします。高速で巻いているので、巻きアワセになり改めてアワセの必要はありません。不安な時は軽くアワセてもかまいません。たまに魚がこちらに向かって泳ぐことによりテンションが抜けることがあります。そんな時は巻くスピードを早めてテンションを掛けた状態にしましょう。針ハズレの原因になります。
サーフトローリングのおすすめタックル
メタルジグなどを使ったルアーフィッシングでは、釣れる魚やルアーの重さによって専用のタックルがあります。サーフトローリングには今のところ専用のロッドなどはありません。投げ釣りをしたことがある人は投げ竿、日頃メタルジグなどのルアーフィッシングをしてる人はショアジギングロッドを使えばすぐにサーフトローリングを楽しめます。ただ専用ではないが故にそれぞれで長所と短所はあります。
ロッドによる長所と短所
サーフトローリングでは主に①投げ竿、②遠投磯竿、③ショアジギングロッドの3種類が使えます。それぞれに一長一短があります。①投げ竿の長所は何といっても遠投力です。他人より遠くへ仕掛けを飛ばせることは大きなアドバンテージになります。ただしこの中では一番重いので長時間の釣りには体力が必要です。②遠投磯竿は竿が長いので長ハリスが使えることと、魚を掛けてからの取り込みやすさが長所です。短所はやはり飛距離が①と③に比べると劣ります。③ショアジギングロッドは遠投力はそこそこあり、重さも投げ竿に比べるといくぶん軽いのですが、長くても3m強の長さしかないので長いハリスが使い辛いことが短所です。
釣れない時こそ投げ竿で差をつける
まわりが釣れない時こそ本格的な投げ竿で少しでも沖を狙いましょう。基本的に青物は沖からやってきます。全体的に釣れない状況が続く時に、沖から回遊してきた獲物を1番に仕留めるための1本です。反発力の強い並継タイプの投げ竿は体力に自信のある人にはおすすめです。
おすすめタックル② ショアジギングロッド
長さが3m前後のショアジギングロッドは投げ竿にくらべると軽く、体力的な負担は少なくなります。メタルジグで釣れない時にはサーフトローリング。サーフトローリングで釣れない時にはメタルジグ。というように併用で使えるのもメリットです。
おすすめタックル③ リール
リールはスピニングタイプの4000番以上で、PEラインの2号が200m以上巻けるものが良いでしょう。投げ専用リールは遠投には有利ですが、ギア比が低くてドラグ機能がないものが多いので、ショアジギング用のリールがおすすめです。シマノナスキー5000XGはギア比が6.2と高く、ドラグ機能搭載でおすすめです。
おすすめタックル④ ライン
ラインはナイロンより細いものが使えて遠投に有利なPEがおすすめです。号数は1号~2号がサーフトローリングには適しています。PEラインには4本綴りと8本綴りがあります。4本より8本のほうが同じ号数でも強度があり、表面も滑らかですが価格が高額になります。まず手始めに巻くならメーカー物の4本綴りで問題ないでしょう。PEの上に投げ切れ防止のため力糸を巻いておきましょう。力糸はラインがPE2号ならナイロンの3号→12号のテーパーラインかPEの2号→6号のものを選びましょう。
おすすめタックル⑤ トレーラー
トレーラーとなるオモリはジェット天秤か遠投マウスを使用します。飛距離はジェット天秤に分があります。遠投マウスはフローティングタイプとシンキングタイプがあります。フローティングタイプは水面で水しぶきをあげて魚を誘います。またスローリトーリーブで水面を泳がすことも可能です。シンキングタイプは中層を通す時に威力を発揮します。
おすすめタックル⑥ 弓角
弓角はサイズとカラーのバリエーションをいくつか揃えておきたいものです。サイズは4cm~6cm、カラーはピンク系、クリア(透明)系、ホワイト系、ゴールド系などさまざまです。はじめはピンク系とクリア系を揃え、徐々にいろんなカラーを試してみるのが良いでしょう。
まとめ
サーフトローリングは聞きなれないと難しいイメージがありますが、簡単にいえば投げて巻くだけで青物が釣れる優れた釣法です。日頃は投げ釣りを楽しんでいる方は沖にナブラが出た時に、ちょっと仕掛けを変えるだけで青物がゲットできるかもしれません。また日頃ルアーフィッシングを楽しんでいる方は、ベイトが小さくてルアーには反応しない時に弓角を曳くことで見向きもしなかった魚が食いつくかもしれません。オモリと弓角をタックルバッグに忍ばせておくと、きっと魚との出会いのチャンスが増えることでしょう。
出典:ライター作成&撮影