ハモは関西の夏を代表する高級魚!
ハモは夏の風物詩として、京都や大阪などの関西地方で特に人気がある魚です。京都の祇園祭や大阪の天神祭に欠かせない食材で、京料理によく使用される高級魚として知られています。
ハモは瀬戸内海周辺でよく獲られており、兵庫県や徳島県が主な産地として有名です。関西では夏が近づくと、旬を迎えたハモが瀬戸内海で多く水揚げされ、料亭やスーパーなどに出回ります。
ハモの特徴
見た目 | 細長い体・鋭い歯・怖い顔 |
---|---|
性格 | 凶暴 |
呼吸法 | 皮膚呼吸 |
生息地 | 西日本の太平洋沿岸部や東シナ海沿岸部 |
種類 | ハモ・スズハモ・ハシナガアナゴ・ワタクズハモ |
呼び名 | ハム(広島県)、ジャハム(愛媛県) |
ハモはウナギ目ハモ科に属する、ウナギやアナゴに似て細長い体をした魚です。怖い顔と口の中に生えているギザギザの鋭い歯が特徴で、人にも平気でかみついてくる凶暴な性格をしています。
国内には4種類のハモが生息していますが、食用として出回るのはハモとスズハモの2種類です。ハモとスズハモは、漁師でさえも見間違うほど外見が非常に似ています。
特徴①:アナゴのような細長い体
ハモはウナギやアナゴのような細長い体をしているのが特徴で、オスよりもメスのほうが大きく成長します。体長は大きいものだと2メートルを超えますが、食用として好まれるのは70~80センチのサイズです。体の表面には、外敵から身を守る役割を果たすうろこがなく、代わりにヌルヌルとした粘膜で体を守っています。
特徴②:ギザギザの鋭い歯
ハモはあごの力がとても強力で、大きく裂けた口にはのこぎりのようなギザギザの鋭い歯が生えています。目に入るものなら何にでもかみつく凶暴な性格をしているため、触れるときはかみつかれないように注意しましょう。
ハモの歯は、下の歯は左右両側から生えているのに対し、上の歯は縦1列に生えています。上下の歯の生え方の違いは、捕まえたエサをしっかりと保持するのに役立ちます。
特徴③:生命力が強い
ハモは陸に揚げても長時間生き続けられる強い生命力を持つ魚です。体の表面を覆っている粘膜で皮膚の水分を保ち、保った水分から酸素を取り込む「皮膚呼吸」ができます。
ハモは現代のように陸上の輸送手段が発達していないときでも、新鮮な状態で食べられた数少ない魚です。大阪から京都までの約40キロの距離を生きた状態で運べたため、海から遠い内陸の京都で重宝されたそうです。
特徴④:主な生息地は西日本の太平洋沿岸
ハモは西日本の太平洋沿岸から東シナ海沿岸の温暖な海域に生息しており、海底が砂や泥で覆われた砂泥地で暮らしています。水温20度以上の暖かい海域を好み、急激な水温変化や低水温を嫌うため、北日本などの寒い地域にはあまり生息していません。
ハモは日中は岩陰に隠れて日が暮れると活発に動き出す夜行性で、イワシなどの魚類やエビなどの甲殻類を食べて生活しています。
特徴⑤:国内には4種類のハモが生息
側線孔の数 | |
---|---|
ハモ | 40個以上 |
スズハモ | 40個未満 |
国内に生息するハモは、ハモ・スズハモ・ハシナガアナゴ・ワタクズハモの4種類です。主に食用とされているのはハモとスズハモの2種類で、ハモとスズハモは見た目がよく似ています。見分けるときは、胴体にある水中の振動や音を感じる「側線孔」の数の違いで区別します。
ハシナガアナゴとワタクズハモは、水深200メートル以上の深海に生息するため、漁ではあまり獲られていません。
特徴⑥:さまざまな呼び名がある
地域 | 呼び名 |
---|---|
広島県 | ハム |
愛媛県 | ジャハム |
徳島県 | アオハモ(オス)、アカハモ(メス) |
ハモは広島県では「ハム」愛媛県では「ジャハム」など地域によってさまざまな名前で呼ばれています。ハムという呼び方は、鋭い歯で人をかむ「食む(はむ)」からきており、ハモは室町時代までハムと呼ばれていたようです。
徳島県では、オスとメスの体色の違いから性別によっても呼び方が変わります。オスは体色が青いので「アオハモ」メスは体色が赤いので「アカハモ」と呼ばれています。
ハモってどんな食材?
よく食べられる地域 | 京都府・大阪府・兵庫県 |
---|---|
味 | 上品でくせがなくおいしい |
旬 | 7月と10月 |
加工品 | そうめん・かまぼこ・ちくわ |
調理するときの注意点 | 小骨が多い、血液に毒がある |
ハモはくせのない淡泊な白身魚で、ウナギやアナゴと比べると脂質が少なく低カロリーなのが特徴です。夏バテに効くビタミンB1や、疲労回復に効果のあるたんぱく質が含まれているため、関西では夏の滋養強壮に重宝されています。
ハモは調理するときに骨を細かく刻む「ほねぎり」をして、骨と身を一緒に食べるので、カルシウムが豊富に摂取できます。
関西では夏に欠かせない食材として人気
ハモは京都の祇園祭や大阪の天神祭など、夏の関西で行われるお祭りに欠かせない食材です。京都では7月を「ハモ月」祇園祭を「ハモ祭り」と呼び、ハモを使った懐石料理などで観光客をもてなします。
関西では、夏バテをしないための滋養強壮にもハモが欠かせません。ハモは料亭だけでなく一般家庭でも多く食べられているため、関西では関東の約10倍ハモを消費すると言われています。
味は上品でくせがなくおいしい
ハモは恐ろしい顔や気性の荒い性格からは想像できないほど、味は上品でくせがなく食べるととてもおいしいです。高級感のあるきれいな白身をしており、焼き物・揚げ物・鍋物などさまざまなレシピで食べられます。ハモの身にはたんぱく質やビタミンB1が、皮にはコラーゲンが豊富に含まれています。
旬は晩夏と晩秋の2回
ハモは8月~9月にかけて産卵する魚で、産卵前後の7月と10月に旬を迎えます。7月頃のハモは梅雨の雨水をたっぷり飲み、栄養を豊富に摂っているので脂の乗りが抜群です。10月頃のハモは「落ちハモ」などと呼ばれ、産卵後でエサを大量に食べるため、大型のサイズが増える傾向にあります。
そうめんなどの加工品が豊富
部位 | 加工品の種類 | 値段 |
---|---|---|
身 | そうめん(50g) | 800~900円 |
かまぼこ(1枚) | 600~900円 | |
ちくわ(5~6本) | 400~600円 |
ハモの身はすり身にして、そうめん・かまぼこ・ちくわなどの加工品としても利用されています。鮮度のよいハモはすり身にすると、身の色が白からピンクに変わり弾力のある食感に仕上がります。加工品は種類も豊富にあり、高級魚のハモをお手頃な値段で味わえるので、お土産などにもおすすめです。
小骨が多く調理前の下処理に手間がかかる
ハモは背骨から身に向かって短く伸びる肉間骨という小骨が多く、食べるには「ほねぎり」という下処理が必要です。ほねぎりとは骨を細かく刻む調理方法のことで、ほねぎりを行うことによって食感がよくなり、ハモをおいしく食べられます。
ほねぎりは、ハモの身に1センチの間に8回包丁で切れ込みを入れる難しい技術なため、習得には10年かかるとも言われています。
血液には毒がある
ハモの血液には、ウナギ目特有の「イクシオトキシン」という毒が含まれているので、刺身などの生食は控えましょう。毒は体内に入ると下痢や嘔吐などの症状を、目や傷口に入ると炎症を引き起こす場合があります。しかし、たんぱく質性の毒で熱に弱いため、60度で5分以上加熱すれば除去できます。
活きたハモを家で調理して食べるときは、必ず加熱処理してから食べるようにしてください。
ハモのおいしい食べ方
ハモは湯引きや白焼きなどのシンプルな味付けの料理で食べるのがおすすめです。湯引きや白焼きは調理も簡単なので、家で手軽にハモを味わいたい人にぴったりのレシピです。
ハモは身以外にも、頭や骨から取れる出汁がおいしいので、鍋つゆなどに使用して食べてみてください。出汁を取るときには、頭や骨を軽くあぶることで旨みの詰まった本格的な出汁に仕上がります。
食べ方①:ハモの湯引き
ハモの湯引きは、夏の関西では定番のハモ料理で「ハモの落とし」とも呼ばれています。ほねぎりしたハモを熱湯に潜らせるだけのシンプルなレシピなので、家でも簡単に作れるのが魅力です。ハモの湯引きは、梅肉や酢みそを付けることで、暑い夏でもさっぱりと食べられます。
食べ方②:ハモの白焼き
ハモの白焼きは、ほねぎりしたハモの身に塩と酒を振り焼いただけのシンプルな料理で、ハモの旨みが存分に味わえます。食べた瞬間にハモの脂がジュワーッと口の中に広がり、コクや甘味も感じられる人気の一品です。ハモの白焼きには、塩やワサビを付けて食べるのがおすすめです。
食べ方③:ハモの天ぷら
ハモの天ぷらは、京都の高級料亭などでも人気のハモ料理で、衣のサクサク感と身のフワフワな食感が味わえる一品です。夏が旬のハモに、ししとうなどの夏野菜を一緒に添えることで季節感を演出できます。ハモの天ぷらを作るときは、皮のヌメリをしっかり落として、冷やした衣を使うとサクッとした食感に仕上がります。
食べ方④:ハモ鍋
ハモ鍋は、兵庫県淡路島発祥のハモ料理で、関西の家庭料理として親しまれています。ハモのあらと昆布から取った出汁に、玉ねぎを一緒に入れて食べるのが定番の食べ方です。残った出汁は、夏はそうめんを入れてさっぱりと、冬はご飯と卵を入れて雑炊にして食べるのがおすすめです。
ハモの主な産地
ハモは瀬戸内海にある紀伊水道や播磨灘でよく獲られており、兵庫県や徳島県が主な産地として有名です。兵庫県や徳島県周辺の海域は、周囲を陸地に囲まれており、山の栄養をたっぷり含んだ川の水が海に流れ込みます。潮の流れが速く栄養を広範囲に運んでくれるので、脂の乗ったおいしいハモが育ちます。
産地①:兵庫県
兵庫県の淡路島や明石市は、ハモの有名な産地として知られており、京都の高級料亭などにも兵庫県産のものが多く出回ります。兵庫県の南に面した瀬戸内海は、海底の地層が柔らかくプランクトンが豊富なため、脂の乗った上質なハモが育ちやすいです。
淡路島産のハモは、見た目がよく傷が少ないことから「べっぴん」などと呼ばれ、地元の人から愛されています。
産地②:徳島県
徳島県は、兵庫県と並び全国有数の漁獲量を誇るハモの産地として有名です。小型のハモや4キロを超す大型のハモを再放流して、安定してハモが獲れるような活動を積極的に行っています。徳島県のハモは、美しく透き通った身をして品質がよいと評判で、「踊る阿呆」や「巴ハモ」などのブランドハモも売られています。
ハモの値段は?
ハモの値段は、1度目の旬を迎える夏の時期が最も高く、冬の安い時期と比べると倍以上の価格の差がつきます。2度目の旬を迎える秋は夏よりも値段が下がるので、漁師の間では「安くておいしいハモを食べるなら秋」などと言われています。
ハモは600~800グラムのサイズが、骨も柔らかく料理に使いやすいため値段が高いです。
夏が近づくと値段が高騰する
ハモの値段は、6月頃が年間を通して最も高く、冬に向かうにつれ徐々に下がる傾向にあります。6月に値段が上がる理由は、夏に京都で行われる祇園祭などで、ハモを食べる機会が増え需要が高まるからです。
2022年大阪本場市場の1ヵ月の平均卸売価格は、6月は1キロ1456円、12月は1キロ537円で取引されています。
大型よりも中型のほうが値段が高い
ハモは600~800グラムの中型のサイズが、食用として最も好まれ高値で取引されます。中型のサイズは脂の乗りがほどよく、骨が柔らかくてほねぎりもしやすいので、高級料亭の懐石料理などによく使われます。
1キロを超える大型のサイズは、脂が乗っておいしいですが、骨が硬くほねぎりをしても舌触りが悪いので加工品などに最適です。
ハモは見た目は怖いが食べるとおいしい!
ハモは細長い体と鋭い歯が特徴の怖い顔をした魚ですが、食べるととてもおいしいです。関西では夏の暑い時期にさまざまなレシピで食べられており、湯引きや白焼きなどがおすすめの食べ方です。ハモは小骨が多くて血に毒を含む取り扱いのしづらい魚でもあるので、家で調理するときは十分注意してください。
出典:PIXTA