アナゴとは?
アナゴはウナギ目アナゴ科に属す魚類を指します。食用とされるものから観賞魚として飼育されるものまで多種多様で人との関わりも深い魚です。大きさは30cm〜1mを優に超える種類まで存在します。特徴は体型が細長く体表にヌメリがありウナギとよく似ていますが、淡水に入るウナギと違って一生を海で過ごします。日本で一般的に「アナゴ」と呼ばれる種類はマアナゴのことです。
血には“毒”あり
意外なことかもしれませんがアナゴには毒があります。正確には血液に毒があり「血清毒」と呼ばれ、血液程ではないものの体表のヌメリにも含まれています。そのため経口摂取だけでだけでなく目や傷口に入らないよう気を付けなければいけません。刺身で食べる機会が少ないのはこのためです。摂取すると嘔吐や下痢を引き起こしますが、熱を通す (60℃5分以上) ことで毒が変性し無害になります。
アナゴの生態
アナゴは生態について解明されていない点がいくつもある不思議な魚です。研究は重ねられているものの、どの様に成長し繁殖するのか明確な答えが出ていないことも少なくありません。そんな謎の多いアナゴの生態をいくつかご紹介します。
生息環境
アナゴは水深が比較的浅く流れの緩い砂泥底や岩の隙間に好んで生息します。海底に巣穴を作りそこに身を潜め、頭だけをのぞかせる光景に愛嬌を感じずにはいられません。実はこの「穴にこもる姿」が名前の由来と言われています。
食性
昼の時間帯は巣穴に身を潜め積極的に活動しません。夜行性のため日が沈み日光が届かなくなると巣穴から抜け出し、海底を這うように活発にエサを探し始めます。肉食性で魚類や甲殻類、ゴカイ類、貝類などを捕食。選り好みするタイプではないので生きている餌だけでなく死んで沈んでいるものも気にせず口に入れます。嗅覚に優れ、遠くのエサでも匂いを頼りに探し当てます。
アナゴの生息地
日本におけるアナゴの生息地は北海道南部以南のほぼすべての沿岸域におよびます。国外では朝鮮半島や東シナ海の広範囲に生息しています。内湾性の傾向が強く外洋で見つかることはまれですが、時折漁獲されることもあるため生息範囲は広いと推定できます。
アナゴの種類
アナゴはとても種類の多い魚です。その数はなんと150種以上。日本近海には20種類以上ものアナゴの仲間が生息していると言われています。味がよく食用として流通するものや体色が綺麗で観賞魚として人気の高いもの、大きさが巨大なもの、とそのバリエーションはとても豊富です。味から外見に至るまで親しまれるアナゴ。そんな多種多様の中から3種をご紹介します。
チンアナゴ
大きさは30cm程と小柄な種類です。白黒の細かい斑模様と各所にある大きな黒斑が特徴。日本の生息地は高知県~琉球列島とされており観賞魚として人気が高く、よく似た姿のニシキアナゴとともに水族館で飼育されている姿をよく見かけます。集団で砂底から顔を出す姿はとてもかわいらしものがあります。プランクトンを捕食するという一風変わった食性をしているため、飼育するには設備と技術が必要です。
クロアナゴ
大きなものでは1.4m程にもなる大型の種類です。食性は動物食性ですが死んだ動物を食べるスカベンジャー(腐肉食性)でもあります。外見はマアナゴとよく似ていますが、黒っぽい体色と側線と背鰭の間の白色点列がないことで区別が可能。これだけ大きければマアナゴ以上に食用とされてもよさそうなものですが、味は大味でマアナゴに劣るため、あまり一般的ではありません。一方でその巨体は釣りの対象魚として人気があり、東京湾ではメジャーな釣りとなっています。
ギンアナゴ
大きさは45cm程の種で生息地はマアナゴよりも沖合に位置します。淡い体色をしていて光沢のある点が名前の由来。マアナゴよりも脂質が少なく旨味も少ないことから食用としての人気は劣ります。しかし、その淡泊な味わいを活かして天ぷらにするととても美味しく頂くことができます。
アナゴの有名な産地
食用として人気のアナゴは全国的に漁獲されています。中でも水揚げの多い産地を1~5位までご紹介します。
- 長崎県
- 島根県
- 愛知県
- 宮城県
- 愛媛県
アナゴは釣っても楽しい!
アナゴは堤防から気軽に釣ることができるので、釣り人に愛される魚です。日本の沿岸域であればほぼ全域に生息している点も人気の一つです。味がよいので専門に狙う人も少なくありません。難しい仕掛けも一切必要なく、ぶっ込み釣りもしくは小型のテンビンを使った投げ釣りが一般的。エサはアオイソメなどのゴカイ類もしくは青魚の切り身、イカを短冊切りにしたもの(通称イカ短)を使うとよいでしょう。タイミングと場所が合えば大漁も珍しいことではなく、病みつきになってしまいます。
アナゴの味はいかに?
アナゴはとても美味しい魚で食用魚として人気が高いです。その味についてウナギと比較されがちですが、大きな違いは脂質の含有量にあります。アナゴはウナギの半分ととてもヘルシー。そのため、カロリーも控えめでさっぱりとした味をしています。クセも少なく身の質はふわふわとしていて、皮は香ばしく、さまざまな調理法に用いることができるためとても有用な食用魚と言えます。
旬はいつ?
アナゴの旬は2通りの説があります。“夏”と“冬”です。夏は脂がさっぱりとしていて本来のアナゴの旨味を堪能できます。流通量も多いことから夏のイメージを持たれている人が多いのではないでしょうか。一方で冬はしっかりした脂がのる時期であるため、こってりと重厚感のある旨味となります。アナゴのイメージとは少し違いますが、深みのある味わいはとても美味しく、夏だけでなく冬のアナゴもおすすめです。
人気のアナゴ料理
アナゴは通年漁獲があるため、お店で出されるだけでなく家庭料理としても広く普及している食材です。淡泊でクセのない味をしているため、幅広いジャンルの料理に用いることができます。特に和食と相性がよく焼き物から汁物までさまざまな味わい方があります。その中でも「アナゴならこれ!」と言われるほど人気の料理を3点ご紹介します。
煮アナゴ
アナゴ料理と聞いて煮アナゴを外すことはできません。ふわふわとした身質に甘めのタレがよくなじみ、とろけるような食感を味わえます。臭みの原因となってしまうので調理する前にしっかりとヌメリを取ることが大切です。
蒲焼き
蒲焼きと言えばウナギを思い浮かべますがアナゴにもマッチする調理法です。脂質がウナギの半分なのでカロリーを抑えたい方にもおすすめ。白焼きにしたものを蒸し、タレをからめてもう一度焼くことで柔らかく香ばしい仕上がりになります。
天ぷら
煮アナゴと同じぐらい有名な調理法が天ぷらです。柔らかい食感のアナゴにサクサクとした衣がアクセントとなり絶品と言わざるを得ません。大きなものは脂がくどい場合があるため、小ぶりなものがよいでしょう。また、冬場の脂ののった個体よりも夏場のアナゴ方が適しています。
まとめ
味に定評があり、釣りの対象魚としても人気が高い魚「アナゴ」。種類によっては観賞魚として愛される一面も持ち合わせています。そんな万人に愛されるアナゴの魅力を少しでもお伝えできたのではないでしょうか。どの角度からでもかまいません。少しでもアナゴについて興味を持っていただけたのであれば幸いです。
出展:写真AC