オショロコマは北海道に生息する絶滅危惧種
オショロコマは日本国内だと北海道にのみ生息しており、環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている魚です。環境の変化を受けやすい魚のため、ニジマスなどの外来種との競合や、森林開発などが原因で生息数を減らしています。
オショロコマは釣り人の乱獲でも生息数を減らしているので、釣りを行う際には必要以上に持ち帰らないなどの配慮が必要です。
見た目がとても美しい
オショロコマは「渓流の宝石」と呼ばれるほど、とても美しい見た目をしています。特徴は体側面にある赤い斑点で、日射しに照らされると赤い斑点が宝石のように輝くため、釣り人からも人気です。
オショロコマの体色は、背中側は褐色のある緑色や青色で白い斑点があり、腹側は淡い黄色や白色をしています。体側面には赤い斑点のほかに、パーマークと呼ばれる小判型の黒い模様があります。
エサは昆虫や甲殻類
オショロコマの主なエサは、水底に生息するトビケラやカゲロウなどの幼虫や、水面に落ちて流れてくる陸生昆虫です。生息する地域によってはエビやカニなどの甲殻類や小魚なども捕食するため、ルアーやフライにもよい反応をしてくれます。
エサが少ない川では、浅瀬を乗り超えてエサを探す姿や、水面を飛ぶ昆虫をジャンプして捕食する場面も見られます。
産卵は10月~11月頃
オショロコマの産卵は10月~11月頃始まり、メスとオスがペアになって川底に産卵します。産卵期のオショロコマは、婚姻色で体が黒ずみ腹部が赤く染まるのが特徴です。産卵期には尾で川底を掘り産卵床を作ることから「産卵床を尾で掘る魚」という意味が、オショロコマの名前には含まれています。
ふ化は1月~2月頃
オショロコマのふ化は1月~2月頃で、生まれた稚魚は流れの緩い浅瀬などで、群れで生活するのが特徴です。稚魚は3年で15センチ程度まで成長して、成魚への仲間入りを果たします。オショロコマの寿命は5~7年で、30センチほどの大きさまで成長します。
北海道に生息するほとんどが川で一生を過ごす
北海道に生息するオショロコマのほとんどが川で一生を過ごす陸封型です。海へ下る降海型はドリーバーデンと呼ばれ、知床などの一部の地域で存在が確認されています。
陸封型と降海型の違いは大きさで、陸封型の大きさは20~30センチ程度ですが、降海型は50センチ以上の大型に成長します。降海型は体のパーマークが消えて体色が銀色に変化し、赤い斑点が薄くなるのが特徴です。
北海道に生息するオショロコマの仲間
オショロコマはサケ目サケ科イワナ属の魚で、北海道には同じイワナ属の魚だけでもエゾイワナとミヤベイワナが生息しています。
オショロコマとエゾイワナは見た目に大きな違いがあるため、見分けるのは簡単です。オショロコマとミヤベイワナは見た目が似ており、外見で見分けるのは難しいので、生息地の違いで見分けるとよいでしょう。
エゾイワナ
エゾイワナは北海道全域に生息しているオショロコマと同じイワナ属の魚です。川で一生を過ごす陸封型をエゾイワナと呼び、海へ下る降海型はアメマスと呼ばれます。
オショロコマとの違いは体の模様で、オショロコマにある赤い斑点とパーマークがエゾイワナにはありません。エゾイワナの体には白い斑点しかないため、初めて見る方でも簡単に見分けられます。
ミヤベイワナ
ミヤベイワナは北海道の然別湖にのみ生息するオショロコマの亜種です。数万年前の火山活動で川がせき止められて、湖に閉じ込められたオショロコマが独自に進化したのがミヤベイワナです。ミヤベイワナはオショロコマと同じく絶滅危惧種に指定されています。
ミヤベイワナは湖でプランクトンを主に捕食する
ミヤベイワナは湖でプランクトンを主に捕食するため、体の構造や大きさがオショロコマと少し違います。
ミヤベイワナは湖での生活に適応するため、鰓耙(さいは)と呼ばれるエラの内側にあるトゲの数が、オショロコマよりも多いです。鰓耙が多いことで湖のプランクトンを効率よく捕食できるため、オショロコマよりも大型に育つ傾向にあります。
オショロコマの生息地
オショロコマは北海道の限られた地域にしか生息しておらず、主に道東エリアや道北エリアに生息する魚です。道東エリアの知床半島では生息数が多いことで知られており、道北エリアは石狩川上流などに数は少ないですが生息しています。
オショロコマは水温の低い場所を好む魚なので、道東エリアの羅臼川や斜里川の渓流に行けば姿を見られるでしょう。
生息地①:羅臼川
羅臼川は根室地方の羅臼町を流れる川で、知床半島の東側に位置する二級河川です。オショロコマの生息数が多いことで知られており、上流~中流域にかけてオショロコマが生息しています。近年はダムの建設やニジマスとの競合により、生息数の減少が問題視されています。
生息地②:斜里川
斜里川はオホーツク地方の清里町と斜里町を流れており、知床半島の根元に位置する川です。年間を通して水量と水温が安定しているため、オショロコマを含めたさまざまな魚種が生息しています。斜里川では支流のほうがオショロコマの生息数が多く、本流は開発などの影響によりオショロコマの生息数が減少傾向にあります。
生息地③:石狩川
石狩川は北海道の中西部を流れる一級河川で、北海道を代表する川のひとつです。オショロコマは大雪湖より上流に生息しており、湖の流れ込み付近でも姿を見られます。知床半島の川と比べると生息数は少ないですが、降海型のような見た目をした良型のサイズが釣れることもあります。
生息地④:然別湖
然別湖は十勝地方の鹿追町と上士幌町にまたがる自然湖で、北海道の中央に位置しています。然別湖にはオショロコマの亜種ミヤベイワナが生息しており、40~50センチの大型も生息しています。然別湖で釣りは可能ですが、解禁期間や人数に規制があるため、釣りに行く際には注意が必要です。
オショロコマを釣るには
オショロコマを釣るのに最適な時期は、エサが豊富にあり魚の活性があがる7月~9月頃です。狙うポイントは、川の源流や渓流の流れが緩くて水深がある淵やトロ場などの岩影です。オショロコマは警戒心が薄い魚なので、居場所がわかれば初心者の方でも簡単に釣れるでしょう。
釣り方はルアー釣りとエサ釣りがおすすめ
オショロコマは小規模な川にいることが多いので、初心者の方でも扱いやすいルアー釣りやエサ釣りがおすすめです。フライフィッシングでも狙えますが、フライは投げる際にスペースを必要とするため、小規模な川では上級者向けの釣り方です。使用するロッドは長いと木の枝などに引っ掛かるため、短めがよいでしょう。
使用するタックルは渓流用
オショロコマ釣りで使用するタックルは、ルアー釣りとエサ釣りどちらも渓流用のタックルで問題ありません。
ルアー釣りの場合、4~6フィートの渓流トラウト用ロッドがおすすめです。リールは1000~2000番台のスピニングリールに、ナイロンラインの4~5ポンドを巻きます。ルアーは小型のシンキングミノーや、5グラム前後のスプーンをポイントによって使い分けましょう。
エサ釣りではブドウ虫や川虫を使う
オショロコマをエサ釣りで狙う場合、エサにはブドウ虫や川虫を使い、重りのガン玉を付けて上流から自然に流すようにしましょう。エサを上手に流すには、川の流れや水深によってガン玉の重さを変えて、底付近を流すのがコツです。
渓流釣りの装備とヒグマ対策を忘れずに
オショロコマが生息するエリアは、ヒグマの生息エリアと重なるため、渓流釣りの装備とヒグマ対策が必要です。渓流釣りではウエーダー・ランディングネット・グローブは必須です。夏場は日よけの帽子や、アブや蚊が多いので虫よけスプレーもあると便利でしょう。
ヒグマ対策には熊鈴や熊よけスプレーを用意して、ヒグマの糞や足跡があったら釣りを止めて引き返すようにしましょう。
オショロコマは食べられるの?
オショロコマは、イワナやヤマメと同じように食べられますが、野生の魚には寄生虫がいる場合があります。食べる前には加熱や冷凍などの寄生虫対策をしてから食べるようにしてください。
オショロコマの味はイワナに似ており、脂肪分が少なく低カロリーであっさりとした味わいです。栄養面ではタンパク質が豊富で、ビタミンB12やビタミンDが多く含まれています。
食べるなら加熱調理がおすすめ
オショロコマを食べるなら、塩焼きや天ぷらなどの加熱調理がおすすめです。寄生虫は熱に弱いので、しっかりと中まで火を通せば安心して食べられます。塩焼きで食べる場合、塩を振って焼くだけでいいので手間もかからず、オショロコマをおいしく堪能できます。
刺身などの生食は冷凍してから
オショロコマを刺身などの生食で食べるときは、冷凍してから食べるようにしてください。冷凍する場合は、マイナス20度で24時間以上冷凍すれば寄生虫を除去できます。
北海道には「ルイベ」という郷土料理があり、オショロコマを冷凍して凍ったまま薄く切れば、ルイベと同じように食べられます。ルイベは半解凍の状態が食べ頃なので、刺身とは違った食感が楽しめるでしょう。
オショロコマは北海道でしか見られない魚
オショロコマは絶滅危惧種に指定されている希少な魚で、北海道の限られた地域でしか見られません。道東エリアや道北エリアの渓流に生息しており、赤い斑点が特徴的な美しい見た目は一見の価値があります。オショロコマは居場所がわかれば簡単に釣れる魚なので、釣り初心者の方でも姿を見られるでしょう。
出典: photoAC