スピアフィッシングとは?
スピアフィッシングとは、銛で魚を突くスポーツです。日本では、魚突き漁と呼ばれ古来より行われてきました。海外においては、遊漁や趣味よりも競技として行われ、世界中で親しまれる人気スポーツです。
資格は必要なく道具がそろえば、初心者でも始められます。しかし、自然が相手なので危険も伴います。けがや事故がないように、安全な始め方を知っておくことが重要です。
スピアフィッシングの特徴
スピアフィッシングの最も大きな特徴は、専用の手銛を使い魚を突いて獲ることです。スピアフィッシングは、古くから多くの国で漁法の一つとして行われてきました。現代のスピアフィッシングは、世界中に点在する有名スポットで国際大会が開かれ、漁法というよりもスポーツとして盛んに行われています。
手銛ひとつで自然と向きあうスポーツ
スピアフィッシングの最大の特徴は、専用の手銛ひとつで自然と向き合い、魚突きで命をいただくことです。突かれた魚は必ず絶命するので、スピアフィッシングにリリースという概念はありません。
スピアフィッシングと同じ海のスポーツである釣りとの違いは、突いた魚はすべて持ち帰り、美味しく食べることが大きな違いです。いくつか専用の道具が必要にはなりますが、決して始め方は難しくありません。
海外では国際大会が開かれるほど人気
海外でのスピアフィッシングは、遊漁や趣味だけでなく、競技として人気があることも特徴です。競技としての歴史は古く、最初の国際大会は1957年に世界水中連盟主催で、世界スピアフィッシング選手権大会が開催されました。
現代の世界大会は突ける魚のサイズや魚種など競技性を高めるルールが多くあり、毎年大会が開かれるほどの人気スポーツです。
スピアフィッシングに資格は必要なし
スピアフィッシングをするうえで資格の取得は必要ありません。資格が必要ないため、初心者でもすぐに挑戦できます。しかし、潜るスポットの特徴やトラブル回避の方法などが分からないとリスクに繋がります。安全な始め方として、スクールに通ったり、経験者と一緒に潜ったりすることがおすすめです。
獲れる魚の種類は30種以上
スピアフィッシングで獲れる魚の種類は、30種以上と豊富であることも特徴です。漁獲禁止の魚を除く日本各地に生息する魚すべてが対象になります。そのため、様々な魚種を魚突きのターゲットにできる楽しみがあります。
高級魚ハタの刺身を食べたり、巨大なヒラマサの力強さを感じたり、魚ごとに違った経験が得られたりするのもスピアフィッシングの魅力です。
スピアフィッシングに必要な道具
スピアフィッシングの始め方は、必要な専用道具を揃えることからスタートします。浅瀬の魚突きであれば、専用道具は不要です。しかし、スピアフィッシング魚突きに加え素潜りをするので、専用道具が必要です。
揃える道具は魚を突く手銛・潜水場所を知らせるフロート・魚を保管するメグシなど、初心者であれば馴染みのない道具が多くあります。揃え漏れがないように一つづつ確認しながら準備していきましょう。
①手銛
手銛は魚を突くときに使い、スピアフィッシングにおいて最も重要な道具の一つです。スピアフィッシングで使う手銛は、カーボン製シャフトの先端部に鉄製銛先を装着し、柄に引きゴムがついています。長いもので4メートルを超える手銛もありますが、初心者は2~3メートルの長さの手銛が扱いやすく、おすすめです。
②マスク&シュノーケル
マスクとシュノーケルは、水面で呼吸をしながら魚を探す際に欠かせない道具です。初心者がマスクを選ぶ際のポイントは、顔の形にマッチしたものを選ぶことです。顔に合わないと海水がマスク内に入り煩わしさを感じるので、店頭で実際に付けて自分にあうサイズを購入しましょう。
③フィン&ブーツ
フィンは泳力を生み出すために使用し、ブーツは岩場を移動する際のけが防止のために履きます。フィンは浅瀬の魚突きであれば要りませんが、潜水する必要があるスピアフィッシングには必須道具です。
スピアフィッシングで使うフィンは推進力が大きいロングフィンが一般的ですが、長く初心者には扱いづらい欠点があります。最初はシュノーケルで使う短いフィンから始めるといいでしょう。
④ウェットスーツ&グローブ
ウェットスーツとグローブは体温低下を防ぐために着用します。長時間の潜水や低温の海に入る場合は、低体温症のリスクがあるので必ず着用しましょう。その他の機能として体の保護があり、クラゲとの接触や岩場で体をこすった時に体表を守ってくれます。
ウェットスーツは頭から手・足首まで覆うタイプがおすすめです。グローブは手銛の操作性を上げるため、滑り止め付を選びましょう。初心者は、マリンスポーツ専門店で店員に相談するのがいいでしょう。
⑤ウェイトベルト
ウェイトベルトは潜水する際に潜りやすくする道具です。ウェイトがウェットスーツの浮力を打ち消すことで、体力を使うことなくスピーディーに潜れ、1回の潜水時間を伸ばせます。
ウェイトベルトは緊急時にすぐを外せるよう、潜る前に練習をして外すコツを掴んでおきましょう。初心者はワンタッチでウェイトベルトを外せるものがおすすめです。
⑥フロート
フロートは、航行する船舶に対して潜水位置を知らせ、衝突を回避するために使う道具です。その他の機能として、突いた魚をフロートに係留できるので、泳ぎの負担を減らし潜水時間を伸ばせます。
魚を突いたとき暴れて手銛を落とすことがあるので、フロートと手銛は長めのロープで繋いでおきましょう。たとえ落としても、1度浮上して呼吸を整えてから回収できるのでおすすめです。
⑦ナイフ
ナイフは、突いた魚を締める時や水中で釣り糸に絡まった時に糸を切るために使用します。特に糸絡みのトラブルは命を落とす危険があるので、パニックにならずに冷静にナイフを扱えるように準備しましょう。
ナイフ選びのポイントは、装着したナイフが泳ぎを邪魔しないことです。サヤをベルトに固定できるものやバンドで腕に付けられるものが泳ぎの邪魔にならずにおすすめです。
⑧メグシ
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メグシは、突いた魚のエラから先端の金属を通して一時的に魚を保管するために使います。スピアフィッシング経験者は魚を突くたびにフロートに係留したりせず、ベルトに繋いだメグシに保管して次の獲物を探すのが一般的です。
使い方のコツは、大型魚が獲れたり複数の魚をメグシに通して、泳ぎづらくなってからフロートへ係留しにいくと、体力の消耗を抑えられて、効率的に魚を突けます。
スピアフィッシングの潜り方
スピアフィッシングの基本となる潜り方をジャックナイフといいます。ジャックナイフとは、折り畳みナイフのジャックナイフのように体を直角に曲げて海中に沈める潜り方です。ジャックナイフの潜り方は、目標に向けて最短距離で潜れるため、体力と酸素を効率的に使え潜水時間を伸ばせるという特徴があります。
コツをつかめば、初心者でも一日で習得可能なので、積極的に挑戦しましょう。
①水面に体をまっすぐ伸ばし手を水底に向ける
ジャックナイフの始め方は、全身の力を抜いて水面に浮かぶ体勢からスタートします。呼吸を整え、リラックスした状態から両手を海底に向けて伸ばし、体を曲げる準備をしてください。視線は、おへそからまっすぐ海底方向に向かったポイントに落とすようにしましょう。
②上半身を直角に曲げ水中に潜り込む
大きく息を吸い、体を水面に対して直角に曲げ水中に潜り込みましょう。手をまっすぐ海底に向け伸ばしたまま、できるだけ頭を真下に向け、頭の重みを使って体を沈めていきます。斜めに沈むと、上半身が水の抵抗を受けて、体が沈んでいきません。
頭を真下に向けて沈むコツは、体を曲げたときの目線を海底には向けず、海底に向かってできるだけ水平に向けることです。
③両足を上げて体を水面に対して垂直にする
体が沈み始めたら、逆立ちの要領で両足を海面の上に勢いよく上げましょう。水面に対して垂直の体勢がとれると、頭と足の重みで全身がスムーズに沈んでいきます。体が曲がっていると、水の抵抗を受けて沈まないので、できるだけ早く体をまっすぐにし、垂直体勢をとることがスムーズな潜り方のコツです。
④体が水中にすべて沈んだらフィンを蹴りだす
体を垂直に立てたら目線を海底に向け、同時に腕で大きくひと掻きし足先まで水中に沈めます。全身が水中に沈んだら、フィンを蹴りだし目標方向へ進みましょう。足先まで沈む前にフィンを蹴りだしてしまうと、太ももやすねに当たる水圧で潜れません。足先まで完全に沈み込んでから蹴りだすことが潜り方のコツです。
スピアフィッシングはどこでできる?
日本は海に囲まれていることもあり、35の都府県内にスピアフィッシングを楽しめるスポットが存在します。しかし、都道府県ごとにルールが設定されており、スピアフィッシング禁止の海域もあるので、注意しましょう。事前に潜るスポットのルールを調べることがトラブルを回避したスピアフィッシングの始め方です。
海と面する35の都府県でできる
日本では、北海道、岩手、千葉、兵庫、和歌山を除く35の都府県でスピアフィッシングができます。都府県ごとに漁業調整規則でルールが細かく設定されており、使用可能な道具や潜り方などに制限があるため、注意が必要です。複雑なルール設定の神奈川では、魚突き可能で水中眼鏡禁止とあり、実質は禁止しています。
漁業調整規則は水産庁HPに掲載しているので、潜る前に確認しておきましょう。
スピアフィッシングの注意点
スピアフィッシングには体調変化への注意・船舶との衝突・危険な海洋生物など事前に知っておくべき注意点があります。知識がないことで、重篤な怪我や命を脅かすほどの危険にあう可能性もあります。
注意すべき点は、体調・船舶・海洋生物のみならず漁業関係者への配慮も必要です。思わぬトラブルを防ぐためにしっかり確認しておきましょう。
無理に長時間潜らない
スピアフィッシングの最も重要な注意点は無理をして潜らないことです。少しでも体が重く感じたり、体が強張る感覚があったら、すぐに休憩もしくは中止しましょう。海中で体力を使い果たし、酸欠に陥り、失神してしまうと、周りに誰もいなければほぼ助かることはありません。
自身の体力の限界を知っておくこと、潜っていられる潜水時間を知っておくこと、慣れるまでは一人では潜らないことが安全なスピアフィッシングの始め方です。
船舶の往来が多いポイントでは潜らない
船舶の往来が多いポイントでは、絶対に潜らないようにしましょう。魚影が濃いスポットだと船舶も増え、船の引き波で荒れた海面から潜水者を見つけることは、注意深く操船していても困難です。船舶と衝突してしまうと、命に関わる怪我を負う危険性があるので、極力船舶が少ないスポットを選びましょう。
危険な海洋生物には触れない近づかない
海には危険な海洋生物が多く存在しており、岸から近く、ひざ丈程度の浅い海でも危険生物の生息域です。鋭く伸びた上下のあごが特徴のダツや美しいヒレに毒を隠し持つミノカサゴなど数え上げたらキリがありません。
潜る海域にいる危険生物を事前に調べ、見つけても絶対に触れない近づかないことが安全なスピアフィッシングの始め方です。
潜るエリアの漁業権を事前に確認しましょう
漁業権は、「一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利」であり、定置漁業権、区画漁業権及び共同漁業権の3種類があります。
日本の海には漁業権が存在し、共同漁業権を漁業関係者が有し、遊漁者の漁獲行為を規制・もしくは禁止しています。漁港のみならず、釣りスポットや遊泳スポットにも規制している場所があるため、注意が必要です。各自治体の詳しい漁業権の内容は、水産庁HPで確認できるので事前に調べておきましょう。
スピアフィッシングは海のトライアスロン
スピアフィッシングは潜る、泳ぐ、突くの3つを同時に行うため、海のトライアスロンとも言えます。3つすべて楽しむためは、潜り方のコツや海の知識、手銛の使い方など学ぶことが多く、簡単ではありません。しかし、困難だからこそ、探求心が生まれ、奥深さにハマっていきます。
釣りやダイビングにはない、新しい自然の楽しみ方をスピアフィッシングならば体感できるでしょう。
出典:Pexels